掴めそうで掴めないxx。
No.19
2011/08/11 (Thu) 02:18:46
(レイアークの本部、その外壁に腰掛けて悠然と煙草をふかす男がひとり。数十分経った頃、彼の足元には無数の煙草の吸殻が散らかっていた。―やがて、ふう、と大きなため息をひとつ零して暗闇に目を向けて)
……遅え。誰を待たしてると思ってんだ、ああ?
(何もない暗闇。―だがしかしそうではなかった。闇と同化した一人の女性が、それに対して返答をする、)
……申し訳ありません、若様。
何度も聞いた言葉だ、小夜。いい加減定刻通りに来いよ。
努力はしております。
それも聞き飽きたぜ、ったく。時間も惜しいからとっとと報告。
はい。―まず七尾ですが、今の所動きに変化は見られません。
どうせアイツの事だ、裏でこそこそやってるかお前が離れてる間にやってるかだろ。次。
朱鷺ですが…頻繁に連絡を取り合う相手がいるようです。ほぼ毎晩、短い時間ですが携帯で通話をしている姿を確認しました。
離れた実家、か?独り立ちできねえ馬鹿でもないだろうが……気になるっちゃ気になる、か。次。
時鳥ですが、こちらも特に目立った動きはありません。
こそこそ動くのは女一人で充分ってか?まあいい、他に気になったことは?
いえ、特には。
…まあそんなモンか。わかった、引き続き3人の動向監視。それと、朱鷺乙姫の携帯の確認。
どこまで見ましょうか、若様。
…変に疑い深いと聞いたからな……通話相手の確認ができればいい。
わかりました。…では、またひと月後の定刻にてお会いしましょう。
次は遅れんなよ。
努力します。―では。
(この言葉をきっかけに、闇に紛れた気配は跡形もなくなる。一方の大上はと言えば、散らかした煙草の吸殻を片付けるでもなくその場でおもむろに携帯電話を取り出した。黒い、スライド携帯。登録はしていないが故に頭にインプットした番号を手で打って発信し、耳に当て―相手が取ったことがわかれば確認もせず話し始め)
…いちいち手間取らせんなクソ野郎。
『それはお前も同じだろう』
お互い情報は生で会って、か?
『………』
直に交換するほど価値のある情報をてめえが持ってるなら考えてやってもいいぜ。ま、俺にはないと先に言っておくけどな。
『情報の価値を決めるのは、提供者ではない』
なら受注側の前提を教えてやる。敷島亘理の行方に直接関係のある、または結びつきそうな情報、だ。
『…電話で気軽にその名を出すんだな、お前は』
敷島亘理の名を聞いて誰かわかんのは、それこそお前とお前の探し人ぐらいだろ。
『………』
ま、お互い気長に行くしかねえわな。―それが嫌なら、とっとと有力な情報稼いでこいよ。
『お前に言われなくてもわかっている、いちいち指図するな』
だったら小夜にこそこそするな。
『だったら私にその監視をつけるな』
………。
『………』
…善処する。言いたいことはそれだけだ、じゃあな。
『―待て、大上』
ああ?
『…彼女の居場所に関する情報は?』
……それこそ直に会って話すことだろ。
(そう言って電話を耳から離して、ぷつ、と通話を切った。懐に電話をしまえば、何事もなかったかのような顔で吸殻を踏んで施設の中へと消えていった―)
最近まったく出番のなかった大上さん。過去から繋がる話とともに大上家時代の付き人の小夜さんに初登場していただきました。小夜さんは大上さんの命令でいろいろ動き回る人ですが、情報収集の命令が多いようです。こう見えて意外と人使いの荒い大上さん(笑)やりとりを見てもらえばわかるように、非常に端的な感じです。このやりとりが間柄を表しているかな、と。
ちなみに最後の大上さんの電話ですが、お相手は皆様の想像にお任せということで。…絶対話し方でバレますけどね!
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